
つくり手を訪ねて / 藻塩づくり
海人の藻塩(蒲刈物産)
万葉集に詠まれた古代の塩を、遺跡出土の製塩土器をもとに現代へ。海水と海藻でまろやかに炊き上げる藻塩のつくり手です。
- 生産地
- 上蒲刈島(呉市蒲刈町大浦)
- 主なつくり
- 藻塩
- 創業
- 1998年(平成10年)
プロフィール
海人の藻塩とは
「藻塩」は、海水と海藻を使った古代の製塩法にちなむ塩です。上蒲刈島の藻塩は、単なる商品ではなく“よみがえった塩”である点に物語があります。
- 万葉集の藻塩 ── 万葉集には「藻塩焼く」情景を詠んだ歌が残されています。この古歌が復元研究の出発点になりました。
- 遺跡からの発見 ── 1984年、蒲刈町(現・呉市蒲刈町)の「県民の浜」造成工事中に、沖浦遺跡から古墳時代の製塩土器が出土しました。
- 復元した人々 ── 地元の松浦宣秀氏らが立ち上げた「藻塩の会」(1984年発足)が製塩法を研究し、失われていた藻塩づくりを現代によみがえらせました。
つくり手の物語|海を焚き、古代の味を今へ
工場長を務めてきた石井裕和さんたちが向き合う原料は、瀬戸内の海水と海藻のホンダワラです。工業製品のように毎回まったく同じ条件がそろうわけではありません。季節によって海の状態も原料の性質も変わるため、最後は人の感覚が品質を支えます。
藻塩づくりには、単に「昔の製法を再現する」という以上の意味があります。古代にこの土地で営まれていた塩づくりの文化を掘り起こし、今の時代に合う形で商品として成立させ、次の世代へ残していく——それ自体が、地域の歴史を未来へ運ぶ仕事になっています。角の立った塩辛さではなく海藻由来のまろやかな味わいは、家庭料理だけでなく、菓子や加工食品とのコラボレーションにも広がりました。
石井さんたちが大切にしているのは、商品だけが一人歩きしないこと。その塩がどんな海から生まれ、なぜこの島で藻塩が復活したのか。背景まで含めて伝えることで、一粒の塩の向こうにある上蒲刈島の風景を届けようとしています。
こだわり
- 瀬戸内海の海水 ── 島を取り巻くきれいな海水を原料に。
- 海藻(ホンダワラ) ── かつて「玉藻」とも呼ばれた海藻を使い、海藻由来のミネラルとうまみを塩に移します。
- ていねいな炊き上げ ── 海水と海藻を釜でじっくり煮詰めることで、塩かどの立たないまろやかな塩に仕上げます。
つくり方
- かん水づくり ── 海水に浸したホンダワラを乾かす工程を繰り返し、塩分濃度を高めた「かん水」をつくります。
- 炊き上げ ── かん水を釜(かつては土器)でていねいに煮詰め、海藻のうまみを含んだ塩を採ります。
地域との関係
藻塩づくりの舞台となった「県民の浜」は、遺跡・海水浴場・温浴施設などを備えた上蒲刈島の観光拠点でもあります。海に囲まれた島の恵みそのものである藻塩は、先人の知恵を次の世代へ受け継ぐ取り組みとして、地域の食文化と観光を支えています。
インタビュー
藻塩は普通の塩と何が違いますか?
海水に加えて海藻(ホンダワラ)を使うのが特徴です。海藻由来のミネラルとうまみが溶け込み、塩かどの立たないまろやかな味わいになります。
どんな料理に使うのがおすすめ?
素材の味を引き立てたい料理に向きます。おにぎり、天ぷらやお刺身の付け塩、焼き野菜、卵料理など「塩そのものを味わう」使い方がおすすめです。
贈り物に向いていますか?
常温で日持ちし、好き嫌いが出にくい実用品です。かさばらないため、手土産・プチギフトや料理好きの方への贈り物に選びやすい一品です。
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